彼らの顔から笑みが消え、真一文字に口を閉じたまま、私の目をずっと覗き込んでいた。
そして私は、そんな彼らの顔から目が離せなかった。
彼らの行動と、状況と、そしてそれに繋がっているであろう原因とを、頭の中で整理をしてみても、それらが一本の線では繋がらない。
なぜ、彼らは急に態度を変えたんだ。
なぜ、彼らは私を立たせなかった。
なぜ、彼らは私から目を反らさない。
浅くて速い自分の呼吸音が、自分の耳に響いていた。
なぜ……、どうして二人は、ずっと笑っていたんだろうか……。
機械か何かのように冷たい表情で私を見ている彼らに、どんな言葉で話を切り出したらいいんだろうかと思っていたら、カウンターに置かれたグラスの氷が、ふいに「カラン」と音を立てたんだ。
私がその音の方向に目を向けると、ケイの静かな声が聞こえてきた。
「あなたは、私たちに同調して欲しいんですか? それとも同情を?」
「なっ……」
ケイのその問いかけに、私は一瞬動揺して眉を寄せた。
私の話に賛同してくれなかったエマに対して苛立っていたのは確かでも、その感情を「共感してもらいたいのか? それとも憐れんで欲しいのか?」なんて、そんなあからさまな言葉を言われたことなんて、それまでに一度もなかったからね。
そして私は、そこでまた、怒りを覚えていったんだ。
「そのどちらも……、そうでしょう?」
エマがケイの意見に相槌をうつと、私の怒りはどんどん大きくなっていく。
この2人とは長い付き合いだ。でも、ここまで馬鹿にされたことが今までにあっただろうか。ずっと楽しく酒を飲み、静かに語り合える仲間だと思っていた。なのに、彼らにとっては違っていたんだ。私は仲間なんかじゃなかった。
「怒りでいっぱいって顔をしているわね。そしてきっと、それは私とケイのせい。あなたの話に同調の言葉を返さずに、そのうえ同情もせず笑った私と、私と一緒に笑ったケイも同罪ってところなんでしょう」
「あなたがそうして欲しいというのであれば、エマも私も、あなたのお望みの言葉を言いましょう。人は、口でなら何とでも言えますからね」
私は、大きくなりすぎた怒りのせいで、反論する言葉すら言えずにいた。真っ赤なブラッディメアリーが、カラカラに乾いた私の喉に流れていく。
グラスを持つ私の手は、高まる怒りで震えていたよ。
そして……。
そんな私の様子を見ながら、エマは静かにこう言ったんだ。
「もっとたくさん、真っ赤な血を飲んだらいいわ。だって、あなたは知りたいんでしょう? ねえ……」
あの時。
ああ、そうだ。
私の心臓は、ドクンと一つ、大きな波を打ったんだ。
彼女の口の端が、ゆっくりと、上がっていった。
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